注目していた金融商品のチャートを見ていたら、
「お、値ごろな価格まで安くなってきたな。よし買おう😉」
「つい先日から、上げ調子になってきたな。よし買おう🤗」
という判断をしたことがある人はいないでしょうか?
その結果・・・。
上昇へ向けて切り返すことなく、みるみる下落して含み損を抱える(いわゆる「落ちるナイフ」)。
自分が買った値段が最高値で、みるみる下落して含み損を抱える(いわゆる「高値掴み」)。
こういった経験をしたことが、投資を始めた多くの人にあるはずです。
こういう場面に出くわすと、
「その銘柄やチャートが意思を持って、私に意地悪をしてんじゃねーの?💢」
「投資の神様は、僕のことが嫌いなの?🥺」
とさえ、思ってしまうことがあります。
・・・そう、私のことです🙋♂️
あ、もう今はそんなことありませんよ❗️昔のことです笑
しかし、チャートも投資の神様も、あなたを含めて投資家一人ひとりのことなんか、見ていません。市場に参加する全ての投資家の大衆心理(欲望・恐怖・楽観など)を飲み込みながら、チャートはただ無機質に数値として動いているだけです。しかしそこには、一定の法則(分散=統計的バラつき含む)があります。
この記事では、相場の事実をもとに、チャートを目で見て根拠を得た上でエントリーをするための、具体的なノウハウを紹介します。
これまでに、私はいくつかの記事を書いてきました。実は、今回の内容を紹介するのが、私がnoteを始めようと思った動機であり、これまでの記事はその布石でもありました。私が、ここまでの理解を得るのに2年半の時間がかかり、それを安定的に実践できるようになるのにさらに1年以上がかかりました。
そのノウハウを、惜しむことなくここで公開します。
その適用範囲は、基本的にジグザグのチャートを形成するすべての金融商品が対象になります。為替(FX)、株式インデックス、個別株、コモディティ、仮想通貨…etc.
このことで、投資初心者の方々が、少しでも成果を出して中級者に近づき、安定的な資産形成ができるようになることを願っています。
理論編〜トレンドフォローが大前提!!〜
トレンドに逆らうな!
売買によって価格が変動しながら市場がつくられる金融商品は、かならずジグザグのチャートを形成します。あなたの所有している金融商品のチャートを、少し引き伸ばして見てみてください。
そのチャートは、一定期間で区切ると、必ず次の3パターンに分類できます。
全てのチャートは、これら3つのパターンを、繋ぎ合わせた形をしています。
その場合、
・複数パターンがどのような組み合わせで接続しているのか
・1パターンがどのような横の長さなのか
・1パターンがどのような縦の長さなのか
・1パターンがどのようなジグザグの複雑さなのか
は、その時々の状況で決まります。
しかし、チャートは必ず上の3パターンのどれかに分解・分類できます。
この時、安定的に勝利している投資家がエントリーするのは、その後の値動きについて根拠を持った一定の予測や期待があるときです。ここではそれを、「確度のあるエントリー」と呼びます*註1。
つまり、
上昇トレンドでは買い(ロング)でエントリーした後に、さらに上昇するだろう。下落トレンドでは売り(ショート)でエントリーした後に、さらに下落するだろう。
という予測や期待をしてエントリーをするわけです。これが、投資におけるトレンドフォローによる確度のあるエントリーの基本です。
「上昇中の売り(ショート)」や「下落中の買い(ロング)」は「逆張り」と言われるものです。これは、非常に確度が低くて勝率が悪く、もし含み益が得られたとしてもその利幅は小さく、そうでない場合も難易度が凄く高いものだと理解してください。つまり、初心者が実践すべきエントリーでは全くない、ということです。
加えて、トレンドの無いチャート(いわゆる「もみ合い相場」)では、確度のあるエントリーが得られないため、手を出すべきではない。となります。
以上のことから、投資で安定的な勝利を得られる確度のあるエントリーの基本原則は、
・上昇トレンドで買い(ロング)でのエントリー
・下落トレンドで売り(ショート)でのエントリー
という「順張り=トレンドフォロー」となります。
確度の高いトレンドの認識方法
トレンドの発生しているチャートの認識方法として、次の3つを順番に学ぶことが、確度を高める上では重要です。
- N字波動を基礎としたチャート認識
- N字波動を応用させた複数時間軸によるチャート認識
- その他の基準によるチャート認識
このとき、多くの初心者は「3.その他の基準」の中でも、特にオシレーター系インジケーターから入ってしまいがちです。分かりやすいデッドクロスやゴールデンクロスを頼りにしていたら、なんとなく高度な分析をしている気になれるからです。しかし、それではいつまで経っても初心者のままです。
各種のインジケーターは、「チャートにあるローソク足の値動きという1次資料」をもとに創出されています。その1次資料であるローソク足の値動きであるチャートを読むことが出来ずに、2次資料であるインジケーターを適切に運用できるわけがありません。むしろ、そのインジケーターに頼りすぎていては、「ダマシ」にあって火傷するのを繰り返すことになるリスクを排除できないまま、非効率な投資行動を繰り返し続けなければなりません。
N字波動を基礎としたチャート認識
確度の高いトレンド認識で必須の基本となるのは、「N字波動を基礎としたチャート認識」です。
以後、上昇トレンドを前提として話を進めます。(下落の場合は上下逆で、「逆N字波動」となります。)
そのポイントは次のようになります。
上昇トレンドが、トレンドとして「継続」していくサインは次の2つです。
⑴直近高値を更新する上昇がある。(赤→の先の赤●より上抜け続ける)
⑵直近安値を下回ることなく切上げている。(緑→の底の位置が段階的に高くなる)
上昇トレンド「終了」のサインは、次の2つです。
・直近高値を更新する上昇がない。(赤●に到達できず)
・直近安値を下回って切下げている。(青●を下回る)
このようなトレンドのあるジグザグのチャートは、「波」に例えられます。
*波動理論といいます。
・大きく上に向かう1波め
・小さく下に返す2波め
・また大きく上に向かう3波め
・また小さく下に返す4波め
(・・・以下繰り返し)
上昇トレンドの時、奇数の波は大きな上昇、偶数の波は小さな下落です。
小さな下落の波は、一般に「調整」と言われます。上昇の波は、一般化された名称はありませんが、私は順方向の性質(順向性)をさす「順向」と呼んでいます。
安定した上昇トレンドで変化するジグザグが、トレンド転換して、反転大きく下落する時があります。トレンドを180度変化させる波は、100パーセントの確率で「偶数の波」が起点となります。これは、後の損切りポイントの設定に深く関わるので、このタイミングで触れておきます。
基本的には、節目となる直近安値を切り上げ&直近高値を切り上げていれば、上昇トレンドにあります。そして、上昇トレンドを要素に分解すると、必ず「N字」になります。
つまり、図のように青❶、赤❷、緑❸の3つのN字が見えます。それぞれのN字には、⑴-⑵-⑶の波があります。そして、❶から❸にかけて、⑶と⑴は重複しています。この時、トレンドの発生や継続は⑵より⑶の方が垂直の値幅が長くなった場合。逆に、トレンド終了は⑴より⑵の方が垂直の値幅が長くなった⑵’の場合(緑❸で例示)。となります。
この最小単位の要素まで分解した上で理解されるのが、N字波動を基礎としたチャート認識です。
本記事では、図式化した説明にとどめます。実際に金融商品のチャートを基にした具体的な解説は、次の過去記事をご参照の上、ご自身の所有する金融商品のチャートでも確かめてみてください。
N字波動を応用させた複数時間軸によるチャート認識
よしよし!N字波動を勉強したから、実践しよう😎
お、この銘柄はN字波動で上昇トレンドにあるぞ!よし、買いだ!!
と思って買ったはずなのに、冒頭で触れた
「つい先日から、上げ調子になってきたな。よし買おう🤗」の後に、
自分が買った値段が最高値で、みるみる下落して含み損を抱える(いわゆる「高値掴み」)😂。
という事態になってしまうことがあります。
これも、初心者が中級者になる前によく陥る、典型的な失敗です。
これは上位足の認識が無いために発生しがちな失敗で、次のようにパターンがあります。
⑴上昇トレンドだと思って買い
⑵短期的な含み益を得るも…
⑶その後は含み損の拡大
*この失敗を犯すようなチャート理解の水準(チャート・リテラシー)にある多くの人は、損切り価格を予め設定することができていないことがほとんどです。
この時、「あなたの見たN字波動による上昇トレンドは、どの時間軸ですか?」という問いが、次のステップへの重要な意味を持ちます。
✅3分足だったら、15分足と1時間足では、N字波動のある上昇トレンドになっていましたか?
✅15分足だったら、1時間足と4時間足では、N字波動のある上昇トレンドになっていましたか?
✅1時間足だったら、4時間足と日足では、N字波動のある上昇トレンドになっていましたか?
✅4時間足だったら、日足と週足では、N字波動のある上昇トレンドになっていましたか?
✅日足では、週足と月足では、N字波動のある上昇トレンドになっていましたか?
自分が主として着目した時間軸について、これら上位足も合わせて確認した上で、トレンドの把握をする必要があります。ちなみに、1段階ぶんの下位から上位への関係は、およそ4〜5倍した時間になります。(上の✅を確認してください)
例えば、あなたの着目した時間足の上昇トレンドは、一つ大きな時間軸の下落トレンドの戻り高値なのかもしれません。その場合、上位足の認識に基づいていれば「売り(ショート)」でポジションを取るべきところを、あなたは逆張りの「買い(ロング)」でエントリーしていたことになります。先程の図を例に、上位足の「逆N字」認識を入れると次のようになります。
このように、ある時間軸のジグザグが、さらに大きな時間軸のジグザグの中に入っているという入子構造の前提でチャートを見る方法を、フラクタルな環境認識と言います。これについても、詳しくは過去記事をご参照(リンク)ください。
これを、上位ー中位ー下位の3段階で行った場合、上昇トレンドを例にすると、次のようにチャートを図式化することができます。すると、大局の上位足(赤)がN字の上昇トレンドを作っているのに、中位足(青)や下位足(緑)の小さな下落トレンドに着目して、売り(ショート)ポジションを仕掛けるのは、非常に危険でリスクが大きいことが分かります。そして、それでもし成功しても、小さな値幅しか利益が得られないのも理解してもらえると思います。(上の例は、上昇と下落が
逆の場合になります。)
逆に、上位足が上昇トレンドにあると認識した上で、中位足や下位足の上昇トレンドに合わせてエントリーを狙うことは、確度が高く根拠の多い、利幅も取れるトレードに結びつきます。基本的に初心者のうちは、「上位足+中位足+下位足のトレンドが一致したときだけトレードをする」くらいにルールを決めても良いでしょう。下手に資産を減らさずに、きちんと実践経験を積み、チャートリテラシーを培いながら相場と向き合う一定期間を作るのが、まわり回って資産形成の近道だと考えています。
その他の基準によるチャート認識
上にあげた①と②が、確度を持ってチャートを読み解くための、テクニカル分析の基本原理となります。そして、その確度を高めたり補強したりするためのノウハウとして、その他の基準もあります。私が重要性の高いと考える順番から、代表的なものを挙げると、次のようになります。
・相関チャートの比較:値動きが相関する他のサブ商品のチャート分析(→サブ商品も同様に①と②の手法で分析をした時に、「メイン商品とサブ商品が同じトレンドにある」、「メイン商品とほぼ同じタイミングでサブ商品が同じ方向にトレンド転換する」と確度が高まります。例:メイン商品=NASDAQ100、サブ商品=SP500、ダウ30など。)
・ライン系:トレンドライン、過去の節目となる高値・安値の水平ライン、過去の節目となる高値・安値の斜線の平行分身ライン、フィボナッチ系ライン(→黄金比を主とする水平の価格参照帯)など
・トレンド系インジケーター:移動平均線、一目均衡表、ボリンジャーバンドなど
・オシレーター系インジケーター:MACD、RSI、ストキャスティクスなど
これらついては、上記の①〜②でのチャート認識ができるようになることを前提にして、本来の意味が発揮できます。
投資初心者や、非専業・非プロのファンダメンタル重視系のインフルエンサーの一部に、オシレーター系インジケーターを過度に重視する人がいます。その人たちは、歴が浅いため、オシレーターのみに頼ることで、トレンドの逆をつかまされる(オシレーターのダマシ)ことや、トレンド把握のタイミングが雑になって機会損失を被る、ということを経験していないと考えられます。(例えば、MACDがデッドクロスしたのに緩やかに上昇し続けることなどは、過去の代表的な銘柄のチャートでいくつも先例があります。)そういう人の言うことは、私はエンタメ程度と認識しています。
まずもって、一次資料であるチャートを読む力=チャートリテラシーを獲得する、それが投資の世界に参入したときに身につけるべき最初の基礎力である。
これが、私の基本認識です*註3。
実践編〜N字ブレイクとMTF分析の合体技による「押し目買い」〜
単独で使うと危ない? 〜「N字ブレイク」エントリー〜
理論編では、波動理論をベースに、「N字」波動によるチャート上のトレンド認識と、それを応用させた複数時間軸による高い確度によるトレンド認識についてお伝えしました。このうち、特に「N字」波動によるトレンド認識は、その大元となっているダウ理論やエリオット波動理論によって、初心者の人たちにも聞きかじりで知っていたり実践したりしたことがあると思います。しかし、ダウ理論やエリオット波動理論は、私を含め、多くの中〜上級者はかなりの修正をして自分なりに理論化し実践しているはずです。
ダウ理論とエリオット波動理論で、まずもって修正したい第1のポイントが、両方の理論に共通する「N字ブレイク」エントリーの単純利用です。上の1ー2ー②であげた上位足の環境認識がない「N字ブレイク」エントリーもその一つです。
「N字ブレイク」エントリーを、上で使った図を発展させて説明すると、次のようになります(図内の⑴で買いエントリー)。
しかし、ここでエントリーした後は、大きく2つのパターンに分岐します。つまり、「成功しやすいパターン」と「失敗しやすいパターン」です。その秘密は、既に述べたジグザグのチャートがもつ、状況に応じて発生する性質にあります。
ジグザグによって形づくられる、「上昇トレンド or トレンド無し or 下落トレンド」の3種のチャートには、次のような性質があると先に述べました。
・複数パターンがどのような組み合わせで接続しているのか
・1パターンがどのような横の長さなのか
・1パターンがどのような縦の長さなのか
・1パターンがどのようなジグザグの複雑さなのか
これらは、その時々の状況で決まります。
このうち、「N字ブレイク」エントリーの失敗で最も関わるのは、「1パターンがどのような縦の長さなのか」です。この観点を踏まえて、チャートにある上昇トレンドをさらに場合分けすると、次の2つがあります。
a.【上昇ボラが強い上昇トレンド】=上昇トレンドの定義を満たすが、奇数波が極端に大きく偶数波が極端に小さい場合
b.【上昇ボラが弱い上昇トレンド】=上昇トレンドの定義を満たすが、奇数波と偶数波が共に大きい場合
*ボラ=ボラティリティ(価格変動の度合い)の略
このうち後者は、持ち合い相場に近い上昇トレンドとも言えるでしょう。「N字ブレイク」エントリーに加えて、根拠のある損切りポイントも含めつつaとbを図式化すると、次のようになります。
(尚、根拠のある損切りポイントの設定方法について詳しく知りたい方は、過去の記事を参考(リンク)にしてください。ここで最低限の説明をしておくと、上昇トレンドでは、1つ前の節目となる直近高値をN字ブレイクした場合、ブレイク直前の直近安値の少し下が損切りポイントになります。N字ブレイクする前は、その1つ前の節目となる直近高値の前の直近安値の少し下が損切りポイントになります。)
a.では、「N字ブレイク」エントリー後に力強く上昇し、含み損を抱えることなく上昇し、さらに上の方で調整下落に入りました。その後、a-❶調整前の高値を超えて上昇するかもしれませんが、a-❷調整前の高値を超えずさらに調整下落を深めるかもしれません。しかし、いずれも上の方で調整下落が生じているため、含み益で余裕を持って様子を見ることができます。
b.では、「N字ブレイク」エントリー後にあまり上昇せず、含み損を抱えながらすぐ調整下落に入りました。その後、b-❶調整前の高値を超えて大きな上昇トレンドへ成長するかもしれませんが、b-❷調整前の高値を超えずさらに調整下落を深めるかもしれず、節目となる直近安値(赤丸の左下の安値)までの距離も近くて下落トレンドに転換する危険性がある状況です。そして、いずれも含み損を抱えて恐々としながらその様子を見守らなければなりません。
すると、
「N字ブレイク」エントリーが成功する可能性が高いのはaの場合、
「N字ブレイク」エントリーが失敗する可能性が高いのはbの場合、
だということが分かります。
そして相場の難しいところは、新しく発生したトレンドが、事前の値動きに対して、ボラが強い上昇トレンドor弱い上昇トレンドの発生のどちらになるかが、予め分からないという点にあります。(ただし一定の確度をもとに予測するテクニックはあります。)
特に初心者にとって厄介なのは、深い調整下落を経てから上昇ボラが急に強くなり、大きな上昇トレンドを形成する場合です。そこでは、損切りポイントも遠いため、本来は少ないロットでしかエントリーできないはずで、「N字ブレイク」エントリーをした後に大きく上昇します。しかし、ここで強欲を出して無理なロットを張ったり、後から「たられば」を言ってしまうような意識では、初心者のままです。ここでは、「いってらっしゃい」の精神が大切です。
なぜなら、下のcの値動き(黒色実線)のようになれば良いですが、上のbのような値動きになる場合(cの灰色点線)もあるからです。
こういった場合を想定しつつ、N字波動理論の原理に則りながらも、単純なN字ブレイク以外の効果的なエントリーポイントを探る必要があります。
そこで登場するのが、次のa’・b’にあるような「押し目買い」という買い場です。
a’上昇ボラが強い上昇トレンドでは、先のaにある「N字ブレイク」エントリーの方が損切りポイントとの距離が短いことを考えると、a’よりもaの方が優位性のあるポジションとなっています。
一方で、b’の上昇ボラが弱い上昇トレンドでは、「押し目買い」をすることで、損切りポイントの距離を縮めることに成功しており、bよりも優位性のあるポジションを新しく考えつくことができているのが分かります。そして、b’-❶調整前の高値を超えて、上昇ボラが大きな上昇トレンドへ成長するのを期待しながら待ちつつ、もしb’-❷になったら少ない損切りで済ませることができます。
a、b、c、a’、b ‘、に共通しているのは、上昇のトレンドが形成された後=「N字」波動後のエントリーということであり、その後に高い確度でトレンドは連続的に続くという波動理論に基づくチャート認識があります。しかし、一定の確率で、トレンドは偶数の波動で終了するため、《損切りを想定》したリスク最小化の手段を《事前に用意》しておく必要があります。これを、全てのトレードで考慮できるかどうかが、初心者から中級者へのステップで必ず要求されます。
ここで重要なのは、根拠のあるエントリーを実践する上で、【aとb’の2つの選択肢が効果的である】ということを、波動理論をベースに【予め理解しておく】ことです。このことで、具体的なエントリーポイントの見極めの【手数が増える】とともに、自分の手持ちの運用資産を分割して戦略的に扱うことができるようになります。
具体的には、次の2つのエントリー手法と、そこから損切りポイントとの距離によるロット数の大小を決める2分岐が生じます。(ロット数は大雑把には大中小など3分岐でも良いですが、最終的には客観的な根拠をもとにした数値化が必要です。実例は後述します。)
▶︎「N字ブレイク」エントリーの場合。
→損切りポイントが近いときは、ロット数を大きめにできる(a)。
→損切りポイントが遠いときは、ロット数を小さめにするかエントリーを見送る(b、c)。
▶︎「押し目買い」エントリーを、「N字」波動形成確認後&調整下落後&上昇予兆*の3点を踏まえたで行う場合。
→損切りポイントと近いときは、ロット数を大きめにする(b’)。
→損切りポイントが遠いときは、ロット数を少なめにするかエントリーを見送る(a’)。
*ここでの上昇予兆にも根拠が必要です。後の2−2で具体化しますが、先に答えを言うと「下位足のN字ブレイク」です。
このうち、損失を抑えたり、大きな利益幅が期待できるのは、損切りポイントが近いaとb’の場合であることは言うまでもありません。
以上を、ポジション優位性の「高いor低い」、エントリーの「N字ブレイクor押し目買い」をもとに整理したのが、次の図になります。
*上記cは、エントリー段階ではbに含まれます。
高い場合(上段)→ロット数多めOK
低い場合(下段)→ロット数少なめor見送り
そして、投資初心者さんが浅い学びのままトレードをしていて実践できないのは、このうちのb’です。加えて、b(c)でリスク管理ができず、含み損を抱える期間の長いエントリーをすることが多いのも特徴です。また、エントリーによって適切なロット管理が出来ていないこと。損切りポイントを決めれていないため、直近安値前に損切りをする、直近安値を下回っても損切りできずトレンド終了後も含み損を拡大させる…。これらも初心者に多い、根拠がないゆえに負けやすいパターンです。
【追記】上図を、売り=ショートの場合で整理しなおしたものが次になります。
それでは次に、この中のうちb’のエントリーを念頭に、さらに緻密化して考えていきたいと思います。
MTF分析による環境認識をエントリーへ応用する 〜上位足「押し目買い」と下位足「N字ブレイク」の合体技エントリー〜
先程の1−2ー②で、確度の高いトレンドの認識方法として、複数時間軸によるチャート認識の有用性をお示ししました。そのようなフラクタルな複数の時間足認識をもとに比較分析する手法を、マルチ・タイム・フレーム(MTF:Multi Time Frame)分析と言います。詳しく知りたい方は、すでに解説記事を書いていますので、そちらをご参照(リンク)ください。
そこでは、大局的には上昇トレンドにある「上位+中位+下位」の3つの時間足によるチャートのうち、上位足と中位足でおおよその環境認識を行います。この時に、順張りとなる強気OKの相場と、逆張りとなる警戒・慎重になるべき相場が、次のように区分けされます。初心者が勝率を上げるためには、基本的に順張りの箇所=強気OKゾーンだけでトレードをすることです。
一方で、逆張り(警戒・慎重になるべき領域)でのトレードには、エントリーについても、利確についても、一段上のスキルが要求されます(機会があれば記事化します)。
そのため、逆張りでのトレードは中級者になってからでも遅くありません。着実に資産を増やす条件の第一は、「スキルに見合わない高い難易度の相場でエントリーして資産を無駄に減らさないこと」です。まだトレードが安定していない間は【順張りを基本】とした売買を心がけることを強くお勧めします。
投資初心者さんはこのことを、この場で松っちゃんと約束してください。
上位足の押し目買い&中位足のN字ブレイク
さて、あなたが注目していた金融商品があります。為替でも、個別株でも、インデックスでも、コモディティでも、仮想通貨でも、なんでも良いです。
それの上位足チャート(下図ピンク)が上昇トレンドを形成していて、偶数波の小幅な調整下落を挟んだ後に、再び奇数波の順向上昇に転じようとしているのを、中位足(下図薄青)の上昇具合から察知しました。この時、上位足の調整下落から順向上昇への転換は、中位足(薄青)の上昇「N字」波動によって具体的に察知することができます。ここでは、先のaとa’の中間にあるような、ポジション優位性が高いとも低いとも言えない微妙な値動きでした。
1−2ー②にあげた図を例にエントリーポイントを挙げると、次のようになります。
・MTF分析を使わずに上位足でN字ブレイクエントリーをしていた場合が黄●
・MTF分析を使って、上位足で「押し目買い」エントリー、中位足で「N字ブレイク」エントリーをした場合が赤●
になります。
そしてどちらも、損切りポイントは同じです。
「黄●エントリーのポイントと青●損切りのポイントの距離」よりも「赤●エントリーのポイントと青●損切りのポイントの距離」のほうが、価格幅が圧倒的に短いと言えます。これが、ポジション優位性を得るためのノウハウです。
そして、先のb’をチャートの根拠に基づいて実践していることを意味しています。
黄●なら損切りポイントまでが遠いので小さいロットしか入れられませんが、赤●なら中くらいのロットでポジションを取ることもできます。しかし、とは言え、赤●と青●には一定の距離があるため、あまりに多くのロットを入れ過ぎるのは危険です。
上位足と中位足の押し目買い&下位足のN字ブレイク
次はさらに、中位足(薄青)での「N字」波動を確認して上昇トレンドの発生を見届けたあとに、その中位足が小幅な調整下落をしてきました。そして、その中位足の調整が終わって上昇へ向けて切り返しそうなところを、下位足(緑)のチャートの挙動から読み取ることができました。
この上位足と中位足の押し目買い、下位足のN字ブレイクを指すのが、次の図の紫●のポイントです。
(*なお、赤●の真下にある緑チャートの押し目のジグザグは、中位足の薄青チャートがN字ブレイクして上昇トレンド確定をする前なので、エントリーポイントにはなりません。下落のリスクが高いので気をつけてください。初心者にありがちな勘違いです。)
この時の損切りポイントは、「中位足の押し目買い」という点を軸に設定するなら、中位足(薄青)の節目となる直近高値(図中の★)の前にある安値となり、先程の2−2−①の損切りポイントと同様になります。赤●より紫●の方が損切りポイントの青●に近いので、紫●でのロット数は、中くらいにした赤●の時よりは、もう少しだけ多めにしても良いでしょう。
しかし、ここで他の根拠と組み合わせて、損切りポイントを、下位足の節目となる直近安値にする考え方も可能です。その代表的なものが、過去の主要な節目(赤○)となってきた高値安値の水平ライン(黄帯)です。
*ここでの赤○は中位足と下位足の節目に対応しますが、もっと過去に遡って上位足の節目に対応するとさらに強力に機能する可能性が高まります。
それまでの黄帯・水平ラインが強力なサポートやレジスタンスとして機能してきたことを踏まえつつ、また紫●の直近安値の反発でのローソク足のプライスアクションが力強いものであれば、ロット数を大きくして損切りポイント2に設定するのも、ポジション優位性の観点からは非常に効果的です。
ここで組み合わせられる他の根拠は、先にあげた相関チャートの比較、ライン系、トレンド系インジケーター、オシレーター系インジケーターを、およそこの重要度の順番で参考にするのが松っちゃん流です。ここまで出来るようになれば、中級者にグッと近づくでしょう。
しかし、もしこれらの「複数の根拠」&「強力な根拠」が得られないならば、素直に中位足(薄青)と同じ価格の損切りポイント1を選びつつ中くらいのロット数にしましょう。なぜならその後に、損切りポイント2を切り下げる下落が生じて(4時間足の新しい下落トレンド)、しかし損切りポイント1まで下落する前に上昇へ切り返して、日足の直近高値を更新する上昇となる場合が多々あるからです(「損切りとなるケース」で後述)。
さて、ここまでのノウハウをまとめると次のようになります。
・MTF分析を使わずに上位足でN字ブレイクエントリーをしていた場合が黄●(+損切りポイント1)
・MTF分析を2つの時間軸で使って上位足「押し目買い」エントリー、中位足で「N字ブレイク」エントリーをした場合が赤●(+損切りポイント1)
・MTF分析を3つの時間軸で使って、上位足&中位足で「押し目買い」エントリー、下位足で「N字ブレイク」エントリーをした場合が紫●(+損切りポイント1)
・他の分析を組みあわせて、複数の強力な根拠が得られれば、損切りポイントを近づけながら適切なリスク管理の下で大きなロットを入れることができる(+損切りポイント2)
以上が、N字ブレイクとMTF分析の合体技による「押し目買い」エントリーをする時の実践的な考え方です。
この時、下位足の更に一つ下位足まで、判断基準を下ろすのが効果的な時もあります。ただし、下位足になればなるほど、突発的な要因(経済指標、決算発表、要人発言、政治外交混乱など)によって、チャートに予測困難で不規則なブレ(統計学でいう分散)が生じやすいことは、肝に銘じておく必要もあります。また、その金融商品の主な市場が、どの国なのか、それによってどの時間でよく取引され出来高が増えるのかによっても、ブレが生じやすいか生じにくいかが異なることがあります。このような、チャートの不規則なブレ=予測可能性を阻害する要因やそれについて気をつけるべきことについては、機会があれば改めて記事にしたいと思います。
損切りとなるケース
もし、このエントリーで損切りする場合は、次のような2つのケースです。
1つめは、上位足を含めたトレンドが大きく転換した場合です。具体的には、上位足の直近N字ブレイクの節目安値を、価格が下抜けたときです。この損切りは素直に引き受ける必要がありますが、ロット管理とポジション優位性をしっかり守っていれば、確率論としてトータルでは勝つことができます。これは、2つめの場合も含めて、です。
2つめは、上位足のトレンドは継続しているが、中位足や下位足でのトレンドが複数化・複雑化したときです。
上位足の1波ぶんには、1つ下位足での複数波によって形成されるトレンドが入っています。そのトレンドが1本だったら、非常に綺麗な上位足1波ぶんになります。順張りトレンドの場合は、「上位足の1波ぶん」=「下位足のトレンド1本ぶん」となることが多いです。
しかし、「上位足の1波ぶん」=「下位足のトレンド数本ぶん」となることがあります。逆張りの場合に多く、順張りでも上位足トレンドが終わりかけや市場に迷いのある際にも発生します。そのとき、トレンド数本ぶんを形成すると、ヨコヨコの持ち合い相場に近く、エントリー難易度が高くなることを意味しています。
具体的な損切りケースとしては、
・下位足N字ブレイクでエントリーし、中位足の直近N字ブレイクの節目安値で損切りポイントを置いた。しかし、その損切りに引っかかってしまったが、上位足の直近N字ブレイクの節目安値の前で切り返し、大きく上昇してしまった。
・下位足N字ブレイクでエントリーし、確度のある根拠が複数あったので、下位足の直近N字ブレイクの節目安値で損切りポイントを置いた。しかし、その損切りに引っかかってしまったが、中位足or上位足の直近N字ブレイクの節目安値の前で切り返し、大きく上昇してしまった。
というケースです。
ここが、トレーダーによって判断の分かれるところです。
上昇トレンドであれば、押し目によるエントリーポイントは、上位足の調整下落のあいだに探ることになります。その上位足の調整1波ぶんに、一つ下の中位足のトレンドが複数本あると、持ち合い相場化して判断が難しくなります。そのような場合は、ロット数を下げて上位足の直近N字ブレイクの節目安値に損切りポイントを置いてエントリーするか、エントリーそのものを見送ります。
「上位足の1波ぶん」=「下位足のトレンド数本ぶん」になった時についての詳しい解説は、また改めて記事化します。が、そのような複雑な中位足の相場があるときは、上位足のトレンド転換の可能性を示唆している、というところまでお伝えしておきます。つまり、少し先に、新しい儲けのチャンスがあるかもしれないのです。
《エントリーポイント&損切りポイント&ロット数》は「関数」として一体化して考えるべし!
ここまでに、ポジション優位性を得るための具体的なノウハウを解説してきました。実践編の最後に強調しておきたいのは、「なぜ”ポジション優位性”が必要なのか」ということです。
その理由は、「資産を減らさないため」です。
“ポジション優位性”の本質は、
・どの価格でエントリーするのか
・どの価格で損切りするのか
・どのくらいのロット数にするのか
を「関数」として一体化して考える点にあります。
逆に、「それら3要素を一体化して考えていないのであれば、ポジションを取ってはいけない」ということになります。これら3つの要素を数値化するノウハウは、資産規模やリスク許容度などによっても異なる複雑なものですが、もし需要があれば、そのノウハウも改めて記事にします。また、後述の3−2で実際のシミュレーションをお示しします。
ただ、大雑把な方針は先の2−2にてお示ししています。
エントリーポイントを決める段階で、損切りポイントを決めていること。その二つの値幅の距離によって、ロット数(実際の投入金額)を小さくするか、大きめにするか(、中くらいにするか)を決めること。これらを関数にすると
【(エントリー価格ー損切り価格)×ロット数=対象銘柄の投資可能額×損失許容割合=損失可能額】
となります。つまり、「損失可能額」から逆算して、上記3要素は決定されていなければならないのです(特に変数として操作できるロット数)。これが出来るようになってはじめて、初心者から一歩脱することができ、数値に基づいた資産管理・リスク管理ができるようになったと言うことができます。
具体的なチャート例
では、具体的なチャートをもとに、
・どのようなエントリーポイントがあるのか。
・その時の損切りポイントはどこに設定すべきか。
・ロット数はどのくらいにすべきか。
を見てみましょう
3−1:NASDAQ100の週足ー日足ー4時間足
例として挙げるのは、NASDAQ100のチャートになります。
*次の図は日足を基本表示させた上で、複数の日足を束ねるかたちで半透明かつ大きな週足を追加表示させた状態です。Trading Viewという大手サイトで「MTF Candlestick」というインジケーター機能を利用して表示させています。
そこでは、週足や月足の下落トレンドが続いていた中で、新しい週足レベルの上昇トレンドが発生しようとしています。しかしこのまま週足レベルのN字ブレイクエントリーをすると、損切り価格までの値幅が9%以上もあります(濃い青色の縦長四角形で囲った上下の値幅)。もし無理にエントリーするなら極少数のロット数にすべきですが、ここでは見送ってもよいです。
その後の値動きを見守ると、週足でN字ブレイクをした価格前後でしばらく大きなジグザグをしたあとに、その水準を明らかに下回る下落に入りました。
これは、週足レベルの上昇トレンドの調整下落=日足レベルの下落トレンドの発生を示唆しています。
この後、
・週足の直近安値を下抜けせずに上昇に切り返すかを見守りつつ、
・週足レベルの押し目買い=日足レベルのN字ブレイクでのエントリーを
狙います。
その後、上記の2つの条件が、甘めに見積もれば満たされる値動きになりました。
厳密には、小さい赤N字波動を見ると、赤Nの左下の安値よりも、右下の安値の方が高い値段でないと(切り上がっていないと)、正式なN字波動とは言えません。ここでは、N字の左下安値:19758.75、右下安値:10751.00です。
しかし、右下安値のボトムから緑の日足陽線が力強いプライスアクションを示して上昇していること、ダブルボトムのチャートパターンを示していること等から、一定の確度で日足レベルの上昇トレンドに転換しうると判断します。しかし、判断に妥協があることも勘案して少なめのロットでエントリーして、損切り価格は直近安値に設定しました。エントリーから損切りまでの値幅は、およそ4%です。先程の9.3%とは大きく異なります。なお、余裕をもった損切りポイントの設定を週足レベルの軸でするなら、図中下の青水平線の少し下=週足のN字波動での節目となる直近安値となります。
そうこうしていると、日足で赤い陰線が出現しました。
週足と日足では、両方とも上昇トレンドで、週足の直近高値(図中の上の青線)を目指していると想定しています。この日足の陰線は、日足上昇トレンドの小幅な調整下落という目測を立てて、日足での押し目買い=4時間足でのN字ブレイクでのエントリーを狙います。
次に表示するのは、4時間足を基本として、日足(少し濃い反透明な緑の上昇陽線と赤の下落陰線)と週足(薄い透明な青と灰色の線)をMTF機能で同時に表示したものです。サイズ感は、中間の日足にあわせています。初心者の人には少し見づらいかもしれませんが、ちょっと我慢してください。
4時間足の切り返し上昇部分だけを拡大フォーカスしてみます。
すると、綺麗なN字ブレイク(青緑線)になっているのがわかります。ここを、日足の押し目買いエントリーとして使います。
さらにここでの押し目の切り返し価格は、過去の節目となる高値安値の水平価格帯と合致しており、一定のサポートに守られうる根拠があることが分かりました(紫●)。さらに、少し下にも水平価格帯のサポートを得られそうです(薄紫●)。
加えて、トレンドラインの観点からのサポートもあります。
少し前の上昇上値を結んだ斜線と、同じ角度の平行斜線を分身させて、近い節目安値に移動させると、ちょうど平行チャネルの下限に今回の押し目安値が重なっていることが分かります(下図・茶色斜線)。
さらにさらに、日足の一目均衡表を見ると、ここでも押し目となる節目安値が転換線と雲下限の2つの線にサポートされています。(需要があれば、一目均衡表についても改めて記事にします。)
*実は、ここでの日足のプライスアクションも重要です。今回は省略しますが。上位足のプライスアクションから、下位足のN字波動を読み取れるようになるチャートリテラシーも、中級者に近づくためには大切になります。
以上のように、複数の根拠が得られたため、損切り価格はこれまで図で示したきたように、この押し目の少し下に設定しました。エントリーと損切りの価格幅は約1.3%です。これらにより、ロット数は中くらい(もしくはもう少し多め)を入れることにしました。
この押し目で、まだ考えなければならないことがあります。最初に行った日足のN字ブレイクでのエントリーが、含み益になっています。こちらの損切り価格①を更新して、今回の4時間足N字ブレイクエントリー兼日足押し目のエントリーでの損切り価格②に移動し、逆指値による利確ポイントにします。
どのタイミングで最終的な利確判断とするかは、個人の主観や欲望(どのくらい儲けたいか?)も絡まるので難しいですが、この手続きは「機械的に」、「波動理論によるトレンドの根拠に基づいて」、「利益を守るために」行うことができます。
もちろん、例え今回②の4時間足N字ブレイクエントリー兼日足押し目のエントリーを見逃してしまったとしても、先程①の日足N字ブレイクエントリーの損切り価格を、ここでの利確逆指値の設定に変更することはできるはずです。
ここまで、2つのエントリーを見てきました。
基本は、このルーティンを繰り返してエントリーすることとなります。今回は、【上ー中ー下位】足を【週ー日ー4時間】足にしましたが、3段階の組み合わせはどれでも良いです。ただし、それに伴って気をつけなければならないこともあります。例えば、下位足ではダマシ=統計的なブレが多い、ロット数はどうするか、利確はどうするか等です。しかし、基本的なエントリー方法は、このノウハウになります。
その後の利確についても、いくつか合理的なノウハウがあります。が、トレンドフォロー戦略においては、トレンドが終わるまでは利益を伸ばすのが得策ですし、論理的に妥当となります。かと言って、上位足のトレンド終了まで耐えるとなると、大きく膨らんだ含み益の大半が目減りしてしまいます。(上の例では、下の太青水平線になってしまいます。)
一つ具体的で汎用性の高いノウハウを紹介すると、「中位足のトレンドが終了したら、そこで利確する」というものです。先程の、「エントリー①」での逆指値利確ポイントを「損切り価格②」にずらした方法がそれにあたります。最初のエントリー(もしくは利確ライン更新)後に発生した中位足の「新しい押し目安値」を見つけたら、「その押し目安値の前の直近高値を新しくブレイク」をした時点で、その「新しい押し目安値」の少し下に逆指値による利確ラインを更新し続けていきます。これで、中位足の上昇トレンド(上位足の上昇1波ぶん)の間は、下位足を泳がせながら利益を伸ばし続けることができます。注意したいのは、「下位足のトレンドが終了したら利確」にして逆指値注文をすると、すぐに約定してしまい、上位足の上昇トレンドによる本来の利益幅が得られないことです。
さて、先程のNASDAQ100は、その後どうなったでしょうか?
次のように整理しています。
・日足の上昇トレンド継続中の押し目安値での「追加エントリー検討ポイント」と「利確ライン更新」が発生。
・日足(中位足)の上昇トレンド終了時の「逆N字」形成段階での最低限の利確を実行。
・エントリー①(日足N字ブレイク=週足押し目買い)とエントリー②(4時間足N字ブレイク=日足押し目買い)の利益幅&日数&目安ロットの確定。
もし追加エントリーをしなかったとしても、1ヶ月で一定の利益を得られているのが分かります。
資産規模にもよりますが、
例えば①小ロットのエントリーで10万円、②中ロットのエントリーで30万円を、等倍で入れていたとします。すると
・損切りの場合は、①が約4千円、②も約4千円
*②のエントリー時、①は含み益状態。②の直近高値ブレイクで、①エントリー分の逆指値利確の注文をするので、①の損切りはほぼあり得ない状況になります。
・利益確定では、①1.2万円、②2.5万円 *合計3.7万円
となります。最大限で被りうるリスク4千円に対して、約10倍となる3.7万円の利益が得られました。このように、「損切りによる想定損失価格」:「利確による想定収益価格」を比率で考える方法を「リスク・リワード」と言います。
このリスク・リワードを高めるために必要なのが、根拠に基づいたポジション優位性であり、波動理論=【N字ブレイクとMTF分析の合体技による「押し目買い」エントリー】がそれを実現させてくれます。
本ノウハウの適応範囲と再現可能性
このノウハウは、株式インデックスだけでなく、ジグザグのチャートを形成しながら市場で売買される金融商品の、全てに応用できます。為替(FX)、個別株、コモディティ、仮想通貨、etc….。
あなたが興味のある金融商品のチャートを開いて、まず3−1と同じ週足から観察しながら、確かめてみてください。
また、上中下の3種の時間軸の組み合わせについても、
「1分ー3分ー15分ー1時間ー4時間ー1日ー1週ー1月」足
のどこか隣り合う3つを選択すれば、成立します。
ただし、何度か触れた、想定を外れる値動きの「ブレ(統計的な分散)」の出現頻度や値幅は、投資先の選択としては「個別株や商品現物などの方が多い」、時間軸の選択としては「短時間足の方が多い」(スキャルピングやデイトレ:数分〜数時間でのアクティブ運用)という性質があります。これを安定的に収益化できれば良いですが、それはプロの仕事です。非プロ・非専業の投資家が、未熟なスキルや不十分な取得情報で真似をしたら、必ず損失に繋がったり、投資効率を下げることになります。
この想定外の値動きをできるだけ排除できる投資戦略が、投資先の選択として「インデックス(複数商品を抱き合わせた指数)」、時間軸の選択として「中長期足」にすることです。それを具体化した例が、私が行っている米国株インデックスのスイングトレード(数日〜数週間でのアクティブ運用)です。これは、兼業投資家にとっては、生活時間を大切にしながら、しっかり考えたトレードをする(慌てて焦った売買をしない)ことにも繋がる利点もあります。
長期で付き合う投資先として、なぜ米国株インデックスが優れているのかについて興味のある方は、次の記事をご参照ください。
ロット管理の大切さとリスク許容度に応じた具体的投資ノウハウ
さて最後に、スイングトレードを例にして、総資産に対するロット管理について、実践的なノウハウを付け加えます。(*なお、私は上述の理由からも、短期のデイトレやスキャルピングは、非専業・非プロの初心者にはオススメしていません。)
これを通して、《エントリーポイント&損切りポイント&ロット数》を「関数」として一体化して考える、というのを体感してもらいたいと思います。
以下は「例えば」のお話です。資金額については、ご自分の実情に近い数字をイメージして再設定してください。
あなたの総金融資産を3分割して、そのうちの1分割ぶんを中期のトレードに使えるとします。その額は300万円です。さらに、それを3分割して、3つの銘柄に分けて運用しながらリスク分散をします。
となると、一つの銘柄へのスイングトレード用の分割資金は、100万円です。仮に、トレード1回で許容できる損失額を5%=5万円と設定します。
先程のNASDAQ100のトレードを例に、100万円の運用資金があるとすると、次のようなトレードになります。
まず、トレード①では、損切りラインまでの距離が約4%でした。ここでは、100万円のうち、12万円を使ってCFD*による10倍レバレッジのナスダックを購入します。レバレッジがあるため120万円相当分になりますが、4%の損切りが発生したとしても、損失は約4.8万円です。上で設定した許容できる損失可能額内ですね。(*CFDでは、ほぼ24時間売買ができる利点があります。詳しくはWeb検索をしてみてください。)
その後、トレード①は含み益で伸びながら、押し目を作って切り返し、トレード②のタイミングがきました。②では、損切りラインまでの距離は約1.3%でした。また、トレード①は、②の直近高値ブレイクの段階で②損切りラインに利確の逆指し値注文を更新するため、損失の可能性をゼロにできる見込みです。
この時、トレード②では、残りの88万円のうち、38万円を使ってCFDによる10倍レバレッジのナスダックを購入します。レバレッジがあるため380万円相当分になりますが、1.3%の損切りが発生したとしても、損失は4.94万円です。ナスダック用の資金としては、まだ50万円が残っています。
このような資金割り振りをした後に、上記のような日足トレンドの終了を示す「逆N字」のタイミングで利益確定をしたとします。
すると、
トレード①の利益は12万円の10倍レバレッジ(120万円相当分)に対する11.48%の利益幅で、約13.7万円。
トレード②の利益は38万円の10倍レバレッジ(380万円相当分)に対する8.64%の利益幅で、約32.8万円。
総計して、損切りによる許容損失額を5万円以内で収めながら、約1ヶ月で45万円超の利益となっています。繰り返しますが、ナスダック用の元本は100万円で、リスク許容度に基づいたロット管理をしているため、そのうちの半分しかトレードに使っていません。
このうち、自分の総資産のうち長期積立分の投資先で十分な含み益があったり、一定の給与所得がある人の場合は、リスク許容度が高い状態です。その場合、トレード1回で許容できる損失額を10%=10万円と設定することもできます。すると、先のトレード金額をそのまま倍にしても、スイングトレード1銘柄に充てる分割金額(上限100万円)も、損失許容金額(10%=10万円)も、自分の決めたルール内におさめることができます。そして、その収益は、トレード①と②を実践した場合、1ヶ月で90万円以上となります。つまり、元本100万円に対して月利90%以上、となります。
このようなスイングトレードを、他にも2銘柄で並行して行い、リスク分散も行います。そして、3銘柄でのスイングトレードは、資産全体の3分割のうちの1分割くらいに止めておきます(3分割をどのような比率にするかは、人によって異なります)。しかし、収益率が最も高い投資先は、このスイングトレードの分割パートになると思います。他方で、長期積立投資の安定収益や一定の給与所得があることは、落ち着いた焦ることのない投資思考をスイングトレードにもたらしてくれる、大切な役割もあります。
これが、波動理論に基づいて、私が行ってきたスイングトレードの基本戦略です。そして、そこで得られるトータルの利益率は、超長期積立投資だけでは絶対に得られません。テクニカル分析によるチャートリテラシーを基礎とした、安定的なスイングトレードがあってこそです。上のナスダック100では、実際に私が行ったエントリータイミングの成功例をあげていますが(ロット数は全く別です)、その他のトレードでは損切りをすることもあります。しかし、必ず、すぐに再起可能な範囲での許容損失額しか、損切りしません。なぜなら、そのような小さい損切り額になるようなポジション優位性のあるエントリーとロット数でしかトレードしませんから。
それを可能にする基点となるのが、N字ブレイクとMTF分析の合体技による「押し目買い」エントリーという方法論=ノウハウであり、両方のベースとなるのが波動理論なのです。
損小利大を実現するために必要な、本当に大切な基礎基本
この記事では、損小利大を実現するために必要な、本当に大切な基礎基本を解説したつもりです。そして、この記事でのノウハウは、相場に長く残っている中級者以上のテクニカルトレーダーは、おそらく全員が実践している内容です。ただ、その理解をどこまで整理し、言語化・図式化できる水準まで落とし込んでいるかは、人それぞれだと思います。
しかしながら、それを分かりやすく納得できるレベルで解説している記事や本に、私はこれまで出会うことがありませんでした。(私が勉強不足なだけかもしれませんが。)
そのため、ここにまとめようと思った次第です。
本記事の重要なポイントをまとめておきます。
- トレンドに則ったトレードをすること(順張り=トレンドフォロー戦略が基本)
- トレンド把握は、波動理論をベースとして、N字波動と複数時間足によるチャート認識を組み合わせて行うこと
- エントリーの大前提として、上ー中ー下足のトレンドが揃っている時に行うこと
- ポジション優位性の高いエントリーのために、上ー中位足の押し目買い=中ー下位足のN字ブレイクでのエントリーを実践すること
- エントリーの段階で、節目となる直近安値に損切りを設定(根拠なし=中位足の直近安値、複数&強力根拠あり=下位足の直近安値)し、エントリーと損切りの値幅によってロット数を決定すること(例:値幅が大きい→小ロット、値幅が小さい→大ロット)
最後に・・・。
相場は「9割が待ち」と言います。今回のノウハウが実践できない相場は、ヨコヨコで揉み合いになっていたり、複雑な調整だったりして、難しいチャートである可能性が高いです。ゆっくり、勝てる相場を待つか、別の適した銘柄を探しましょう。
特に、規律性の無いエントリーによるトレードで、無駄に大切な資産を減らすことが無いように、気をつけてもらいたいと思います。待ちの間に、しっかりテクニカル分析の勉強をしたり、実際にチャートでテクニカル分析の演習をしてみたり、最低限の経済ニュースに触れるようにしましょう。低価格で詐欺でないと判断・信頼できるなら、投資リテラシーを学ぶための自己投資をしても良いと思います(書籍・有料記事等の購入)。また、頭がリフレッシュできるようプライベートを充実させたりするのも、冷静なトレードのためには大切になります。
長文となった記事を、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
おそらく、無料でここまでのノウハウを整理・図式化して分かりやすく公開しているのは、私のこの記事が初めてだと思います。なぜ私がこれを一般公開しようと思ったかというと、この記事の内容は、全ての投資家にとって必要な、本当に大切な共通の基礎基本だと考えているからです。凡百のネット情報で、私に関心を寄せていただいたあなたには、この記事内容を前提として、チャートに根拠を持ったトレードで相場に向き合ってもらいたいと願っているからです。
私は、「他人の意見」より「相場の事実」を根拠にトレードをすることを本義としています。あなたにも、それができるように成長してもらい、無駄な損をなくして、効果的に資産形成をしてもらいたいのです。私の記事は全て、「相場の事実」を根拠に書いています。松っちゃんの主観的な意見や感想に依存するのではなく、「相場の事実」=「チャートを根拠」にして、あなた自身が儲けられるようになってもらいたいと考えています。それが、「チャートリテラシーが育っている」ということです。
あなたは、「松っちゃん」を信じる必要はありません。「チャート」を信じてください。私がしているのは、チャートを信じるノウハウを共有しているだけです。早速、過去の膨大なデータから好きな銘柄を選びトレンドのあるチャート箇所を見つけて、この記事の内容をもとにエントリーポイントを探してみてください。それが、テクニカル分析の演習・練習にもなります。そして、この記事内容について、あなた自身がチャートを根拠に効果的だと確かめることができたら、それはあなたのチャートリテラシーが育つ大きな一歩になっているはずです。
本記事が、あなたの投資に、長らくお役立ていただけると幸いです。
追記:本記事のノウハウをもとに別の期間でのNASDAQ100を元にした実践の解説を動画にしました。合わせてご視聴いただけると、理解が深まるかと思います。(1箇所で確度のある逆張りがありますので、ご注意ください。)
もしよろしければ、ブックマークしていただけると幸いです。
また、Twitterでは、米国株インデックスを中心に、リアルタイムでの情報発信をしています。そこでは、相関チャートの環境認識を定期配信したり、ラインやトレンド系インジケーターを使ったテクニカル分析の事例紹介をしています。それらは、本記事の内容を基礎とした、応用としての側面があります。
こちらも、よろしければフォローいただけると嬉しいです。
*註1)ここでの「確度のあるエントリー」を支える「根拠のある予測」には、2種類あります。「テクニカル分析」と「ファンダメンタル分析」です。違いは、次のような点にあります。
・テクニカル分析→数値化されたチャートをもとに未来の値動きを推測判断する
・ファンダメンタル分析→チャートに数値化される前の背景要因をもとに未来の値動きを推測判断する
本記事は、「テクニカル分析」に基づいて書かれています。理由はいくつかありますが、大きなポイントは広く再現可能性がある点です。言い換えると、「ファンダメンタル分析」は専業のプロトレーダーには絶対に敵わず、再現可能性を担保することは私たちには不可能です。この時の「私たち」とは、「専業ではない非プロの人々」を指します。ファンダメンタル分析をベースとするプロは、例えば企業の株価変動の前段階で、A.企業のトップや重役、研究開発部署の管理職たちを対象にしたインタビュー調査などを行い、B.その企業が勝負しているセクター(産業分野)における他企業との相対的な位置付けを評価して、C.企業の公的な情報公開の前段階で事前の売りや買いを段階的にかけていきます。これらA〜Cの手続きが、本当の意味でのファンダメンタル分析であり、金融商品の価格変動において初動を与えている勢力が実践していることです。その意味で、私たちはファンダメンタルでプロには敵わないのです。ファンダメンタル重視の方々で、上記のAを実践していない投資家の方々もいらっしゃるのは承知しています。…が、非プロ・非専業の私たちが投資の世界に参入する上で、テクニカル分析が共通の基礎であり、プロも一緒に乗る土俵での勝負において欠かすことのできない有力な武器であるというのが、私の理解です。
*註2)尚この時、上位足と下位足には、次のような特性があります。
・上位足であればあるほど、下位足への規定力が強くなる。
・下位足であればあるほど、ダマシと呼ばれるN字波動による認識を妨げる、突飛なチャートの挙動(統計的なブレ=分散)が多くなる。
この点を踏まえて注意すべきトレードの実践ノウハウは、また改めて記事にします。
*註3)ちなみに、私もオシレーター系インジケーターを軸にして強力なサインを読み取り、アクロバティックなトレードを実践したことがあります。そこでは、直近大底での買い(ロング・ブル)や直近最高値での売り(ショート・ベア)に、高い確度を持って成功しました。その結果は、最初で最後のトレード公開としてツイッターに乗せています。
しかしそれは、「かなり高度な相関チャートの比較分析」、「一般公開されているファンダメンタル情報のテクニカル分析への落とし込み」などを組み合わせた独自ノウハウです。また、これにはそれなりのリスク=損失の可能性も伴うため、気軽に広く公開することに、大きな躊躇いがあるのが正直なところです。今後、ノウハウとしてリスク明記を前提とした限定公開(中級者以上向け)をするかもしれませんが。